大昔「匿名性について考えている」と言いながら、なんとなくぼーっと考えているだけでぜんぜん形にしていませんでした。ちょっと反省して少しずつ形にしていきたいと思います。もし読んでいる人がいて何か思うところあればコメントしてください。
たくさんのイメージが絡み合っていて自分でも全貌がつかめないので一度に書くのは諦めて、思いつくところから書いていきます。
問題意識は、こうです。インターネットが社会でどう使われているか、あるいはこれからどう使われるかを考えるとき、「インターネットの持つ匿名性が。。。」とかいう議論になることがあります。大抵なんだかマイナスイメージを伴っていることが多いのですが。でも、いろんな議論を横に並べてみると、それぞれの議論で指している「匿名性」が違うものを意味していることが多いことに気づきました。なんか変だなと。
それから、多くの場合「匿名性」がマイナスイメージで語られることも気になっています。僕は昔から「匿名性」について興味があって、それにまつわる研究をいくつかしてきました。例えば電子投票システムの議論であったり、匿名性を利用した相互評価のシステムだったり。ぼくが持っている「匿名性」に対するイメージは、社会的な道具であり、必要に応じてうまく利用できるものであって、結構プラスのイメージなのです。このギャップを埋めたいと考えています。
★名前の性質について考えますよ
まず、匿名性とは何かということを考えるために、名前について考えてみます。というのは、「名前」はその種類によっていろんな性質を持っていて、その性質が一定の条件を満たすと「匿名」と呼ばれているのではないかと思うからです。
名前についてはこれまで長い歴史の中で、哲学やら、社会学やら、法学やら、言語学やら、工学やらでそれぞれ考察されてきていることは承知しているのですが、残念ながらマジメに追いかけていません。機会を見て調べたいと思います。ここでは、名前はモノや人や概念などを区別するものとだけ簡単に定義しておきます。
さて、これはまだ経験的に得た知見を行き当たりばったりにリストにしているだけで、完全なものではないですが、名前の性質を次のような観点から記述すると、匿名の議論を行うのに役に立つのではないかと考えています。
<名前の性質>
- 名前をつける目的
- 何を表しているか。何と結びついているか。
- 持続時間
- 通用する範囲
- 一意性の有無
- 別名を持てるか
- (履歴の)追跡可能性
- (正体の)追求可能性
★名前の性質についてもう少し説明します
項目の中には直感的にわかってもらえないものもあるので、それぞれ一言ずつ説明をつけていきます。
- 名前をつける目的
そのままです。なぜこの項目が必要かというと、「名前付け手法の改善」がありえることを意識しているからです。「なぜ、何を識別したいのか」という目的に対して、「どうやって名前をつけるか」という技術論があるわけです。よく考えると、現行で採用している技術が最適のものでないなんてことも考えられるわけで、その場合、目的を意識すればよりよい技術に変更することができる可能性があります。
- 何を表しているか。何と結びついているか。
そのままです。実際に名前がどういう存在を表しているのか。
- 持続時間
その名前がどのくらい続くかです。これは、後に出てくる(履歴の)追跡可能性や(正体の)追求可能性と大きな関係があります。名前には永続するものもありますが、そうでないものもあります。名前の持続時間が短い場合、同じ主体が次々に名前を変え、追跡が困難になる場合があります。
- 通用する範囲
名前は多くの場合、暗黙のうちに通用する範囲が決まっています。ある名前を想定されている範囲を超えた場所で使うと、予期しないことが起こる場合があります。
- 一意性の有無
名前には、一意に決まらないもの(同じ名前を持つほかの主体がいる可能性がある)があります。名前に一意性がないと、(履歴の)追跡可能性や(正体の)追跡可能性に大きく影響がある場合があります。
- 別名を持てるか
ひとつの主体が複数の名前を持ちえるかという問題です。ひとつの主体はひとつの名前しか持たないことがシステム的に保証されている場合、(履歴の)追跡可能性は高まります。
- (履歴の)追跡可能性
その主体の振る舞いを、その名前を利用してどのくらい追跡可能かということです。
- (正体の)追求可能性
なんらかの理由で、その名前を持つ主体の正体、真正性を追求したいとき、どのくらい可能かということです。誰かが偽名を名乗る可能性をどのくらい排除できるか、ということとも関係します。その名前に対する責任を否認できるか否かという問題でもあります。
★例えば「ペンネーム」にあてはめてみる
例えば「ペンネーム」を上の方法で説明すると、次のようになります。
- 名前をつける目的
著作物の著者の識別
- 何を表しているか。何と結びついているか。
著者。
- 持続時間
任意。一般に数年から数十年?
- 通用する範囲
著名な出版物の場合、言語圏程度。あまり著名でない著作物の場合、配布範囲程度。
- 一意性の有無
常識的には、一意なものを選ぶことが多いが、保証はされない。
- 別名を持てるか
持てる。
- (履歴の)追跡可能性
著名な著作者の場合は、一意性が保たれている可能性が高いことから、かなり追跡可能と思われる。
- (正体の)追求可能性
場合による。
とか。書いてしまってからなんですが、あんまりいい例じゃないような気がしてきました。きっとそのうち他の例も書くと思います。
★今後の課題
書きながらいくつか悩み始めてしまいましたが、その悩みを解決しているといつまで経っても出せないので、とりあえず今はここまで。悩みをメモしておきます。
悩み1) 名前と識別子はどう違うのか。多分90%くらい理解してるんですが確信がないことに気がつきました。多分文脈によってかなりぶれがあって、一般的な定義はない。(情報工学の世界では、おそらくシステムごとに定義がある)
悩み2) 匿名性とは、ある名前の体系が特定の性質を持つ場合の状態を指すのであり、その性質とはなにかを考えればかなり明快に匿名性を定義できる、というのが野望だったわけですが、そうすると「匿名投票」のように初めから名前をつけない行為を説明するときに困るということに気づきました。うーん。後から考えます。
コメント(0)| Track back(0) | 2004-01-28 17:58:43
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