[くまをとる]

「インフラ整備は終わった」か?

これもいつも話していることなので、普段から一緒に議論している人にとっては今更なのですが、念のためまとめておきます。

★実は、最近多くの場所で、こんな言葉を耳にします。
「e-Japan戦略の成果で、ADSLの人口カバー率も9割になった。インフラ整備はもう終わった。しかし、これだけ太いネットワークを作ったはいいが、依然として使い方はわからない。そろそろ真剣にアプリケーションを考えなくてはいけない時期に来た。」

もっともな話に聞こえるが、最近は結構ちゃんとした有識者の人までこんなことを言うので、大変困る。日本のインフラ整備はまったく終わっていない。

★人口カバー率の罠
こういうことを言い始めたのは、総務省系の政府の委員会かどこかじゃないかと、僕は疑っている。実は、最初に作られたe-Japan戦略の中に「5年以内に超高速アクセス(目安として30〜100Mbps)が可能な世界最高水準のインターネット網の整備を促進し、必要とするすべての国民が低廉な料金で利用できるようにする。(少なくとも3000万世帯が高速インターネット網に、また1000万世帯が超高速インターネット網に常時接続可能な環境の整備を目指す。) 」というような表現がある。(詳しくはこの辺を参照のこと)

ちなみに一般には、高速インターネットはADSLおよびCATV、超高速インターネットはFTTHをそれぞれ表していると解されている。これが発表されたのは2001年1月で、そのころ、ADSLの利用者はほとんどいなかった。これが発表された当時、ほとんどの人はこんな目標を達成するのは無理だろうと思ったものだ。しかし、実はこの目標は2002年秋には達成されていて、その時点で3500万世帯が加入可能になっていた。FTTHも、当時加入可能世帯数1400万に達していて、目標をクリアしている。

無論、このことは大きな成功だったと言える。にもかかわらず、僕は現在インフラ整備が終わったとは考えていない。なぜなら、ADSLを使えない地域は今でも非常に多く、それらの地域ではISDNやアナログ接続でインターネットにつないでいるような状況だからだ。

昨年12月に、GLOCOMでNTT東西のホームページの情報を元に、どれだけの市町村でFLETS ADSLサービスが提供されているかを調べた。FLETS ADSLを選択したのは、ADSL事業者の中で一番カバーしているエリアが大きいからである(FLETS がサービスを提供していない地域で、他の事業者が提供しているという例はほとんどありません)。当時すでに人口カバー率は9割と言われていたが、調べて数えてみると市町村カバー率は約52%に過ぎない状況だった。これは、半分近くの市町村ではまだADSLが利用できないということだ。ここでは、市町村のどこかで提供されていれば、その地域はカバーしていると考えているので、電話局から遠すぎてADSLが利用できないような地域のことは計算に入っていないが、人口密度が低い地方の市町村では、この距離問題も頻繁に起こる。

この数字の差は、「人口カバー率」という数字がもたらしている。都市部は人口も集中しているので、都市部から整備をしていくと人口カバー率は急速に高まるわけだ。

★そして最後の10%が難問だ。
しかし、残り10%(あるいは50%)だからもう少しだろうという話にはならない。なぜかというと、仕事が簡単なところから順番にやっていき、最後に難しいところだけが残った形になっているからだ。テストで90点を取るのと100点を取るのは全然違う、というのと似ている。

言わば、これから本当の問題が残っていると言っていい。もしほぼ100%カバーするということが目標であるとすれば、ようやく最初の準備段階が終わって、本当の難問の部分に取り掛かろうというところにやっと差し掛かったというくらいが本当のところだろう。

最後の10%(あるいは市町村にして50%)には、採算性の問題や、距離の問題をはじめとする技術的問題があって、普通に民間事業者に任せていてはできないらしいことがわかっているので、技術的にどう引くかという問題だけでなく、そのインフラをどう維持していくかということについても、課題がたくさんある。これからやっと本題になると言っていい。

というわけで、そろそろアプリケーションの話も真剣にしなきゃいけないというのはわかる気もしますが、「インフラ整備は終わった」というのはまったくの嘘です。

今日はこのへんで。

コメント(0)| Track back(0) | 2004-04-20 23:23:19

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