[くまをとる]

無線ホットスポット事情

そういえばCNETにこんな記事が少し前に出ていた。アメリカで、マクドナルドのWi-Fi事業者がWayportという業者に正式決定して、アメリカではどこのマクドナルドでも無線ホットスポットサービスが利用できるようになりそう、というものだ。アメリカのマクドナルドは13000店舗もあるそうで、アメリカの、少なくとも無線ホットスポット業界には大きな影響を与えそうだ。

というのをきっかけに、無線ホットスポットのこれまでの経緯と今後どうなりそうかということについて、無茶苦茶に簡単にまとめてみたいと思う。

★日本は実は先手を打っていたのですが。
実は日本は非常に早い段階で無線ホットスポットサービスが提供されていた。MIS(Mobile Internet Service)が2001年8月から実験として提供していたのがそれで、2002年4月には有料サービスとなった。2001年8月と言えば、まだ無線LAN内臓のラップトップPCも出ていないころだったと思う。アメリカよりは一歩先んじていたように記憶している。

しかし、同じ年の12月にはもう撤退してしまった。要は客がいなかったのだ。当時300箇所以上のスポットを確保していたように思うが、無線LANのホットスポットというのは到達範囲が意外に狭くて、結構使い勝手がわるい。それから、料金体系があまりよくなかった。月額4000円ちょっとの額だったのだが、これはADSLと同じくらいの値段だ(ただし、そのころADSLはまだほとんど普及していなかったが)。しかし、ホットスポットの方は必ず使うとは限らない。むしろ、使えないことの方が多いだろう。

MISの利用モデルは、基本的に「なるべくたくさんの場所をカバーしておいて、出先で使いたくなったときに、無線ホットスポットがあれば利用できる」というものだった。しかし、多くのユーザーは家庭と職場あるいは学校を往復しており、この2箇所をカバーしておけば生活のほとんどの場面はカバーできてしまうのだ。外で仕事をするというのは珍しいことであり、そのときにたまたまMISのホットスポットが近くにあるということはさらに珍しいことだ。つまり、MISの月額料金4000円は、その珍しいことが起こったときに無線インターネット接続が使える「チャンス」に4000円をはらうということだった。これはちょっと無理というものだ。

★アメリカでの普及
その後、アメリカでも無線LANスポットが普及し始めた。ホテルで利用できるようになったり、スタバで利用できるようになったりして話題になり、去年(2003年)には無線ホットスポットサービスの未来についてかなり攻撃的な予想が立てられ、先行投資が起こっていたりした。Intelの戦略なんかも、その波の中のひとつの出来事に位置づけられるだろう。

しかし、昨年後半には、どうもうまく行かないと言うことがわかってきた。ユーザーの増加は伸び悩み、たとえば新聞には、「スターバックスの無線LANスポットの平均利用者数は日に数人」なんて記事が載ったりした。アメリカでも、「どうもこれはおかしいぞ、苦戦しそうだぞ」という雰囲気が出来てきたのが昨年後半ではなかったかと思う。

しかし、日本はMISの早々の失敗で、はるかに早い段階で同じことが起こっていた。その時期にはすでに、日本の事業者はこと無線ホットスポットには慎重になっていた。この面でも、無線LANスポットに関しては日本の方が早かったと言っていい。昨年中ごろ、日本の無線ホットスポット関係者の間では、すでに「無線LANのサービスに、ユーザーは金を払わないのではないか」ということが共通認識になっていたようだ。

アメリカにはまったく別の方向のプロジェクトもある。NYCwirelessがそれだ。これは基本的にはボランティアによる野良ホットスポットプロジェクトで、将来は無線ノード間での中継をすることで、これに参加する人はアップリンクのインターネット接続を買わなくても、みんなで無線の帯域を共有しあってインフラを作ってしまおうなんてことも考えているらしい。(僕の意見では多分無理だけど。結局誰かがどこかでアップリンクを買わなくてはいけないことは明白だから。ルーティングも結構問題になるに違いない。また、悪さが起こったときの法的責任なんかも問題になりそうだ)

★日本の無線ホットスポットサービス状況
あんまり詳しくないんです。詳しくないんですが。
ぼくの記憶が正しければ、日本の無線ホットスポット事業でいちばん成功しているのは、NTT-Cのサービスです。これのよいところは、一日分だけのサービスを買えることだった。このモデルを持ち込んだのは多分NTT-Cが初めてで、MISの失敗から考えるとこれはよい作戦だったのではと思う。「使うかどうかわからないものに月4000円支払う」よりも、「たまたま今無線が使えるところにいるから、500円払って一日だけ使おう」という方がはるかに払いやすいモデルだ。

しかし、NTT-Cのサービスがちゃんと黒字になっているのかどうかまではちょっとよくわからない。実は、無線を題材にしたあるシンポジウムに参加したとき、その会場ではNTT-Cの無線ホットスポットサービスが利用可能だった。しかし、結果的にはほんの数人しかそのサービスを利用しなかったのだ。そういうことから推しても、なんとなく苦労してるんじゃないかな、というのが僕の予想です。(何かよい情報をお持ちの方は教えてください。)

京都では、「みあこネット」という街角無線ホットスポットサービスを提供するプロジェクトがある。もう200以上のホットスポットがあって、そこそこ利用もされているとのこと。みあこネットにはいろいろと特徴があるのだが、それはプロジェクトのホームページか、以前CANフォーラムと日経デジタルコアの共同企画ぼくが書いた記事を参照していただくとして、ここでは詳しく説明しない。ぼくが思うみあこネットの最大の特徴は、その記事にも書いたことだが、「利用者からは料金を徴収しない」ということだ。その代わり、無線基地局の設置者がお金を払う。

これはなかなかいい案だ。「お客さんに使ってもらうために無線サービスを用意したい」というケースは結構あるだろうと思われるからだ。そういう立場の人が、月々5000円弱払うというのは、十分考えられることだ。アメリカはまだこの方法に気づいていないのだが、僕はひそかに、無線ホットスポットサービスを大規模に展開して、かつ黒字にするためには、この方法しかないと思っている。

コメント(0)| Track back(0) | 2004-04-25 23:27:55

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