[くまをとる]

地域情報化の本質を考える(4)

今回は思いつく限り地域情報化関連のトピックを挙げてリストにしておきたい。まず間違いなく完全なリストではない。他の話題を思いつく人がいれば指摘してください。理解の浅い分野も多いので、外したコメントをしている部分もあるかと思いますが、あえて書いてみます。

■地域通信インフラ構築
多くの地域ではまだ広帯域常時接続を利用できるような状況にはなっていない、ということを始め、インフラ構築に関しては多くの課題が残っている。とにかく、大きな枠組みで言えることは、市場原理・競争の導入では地域の通信インフラ構築は進まないということがはっきりしたということだ。これを受けて、地域では自前でインフラ構築を始める事例が増えている。地域通信インフラ構築はこれからが本番になってくる。

■電子自治体
住基ネットなどで騒がれてもいるが、それはむしろごく一部の話。オンラインでの情報提供やさまざまな業務系システムのオープンシステム化・統合からはじまり、手続きのオンライン化、BPR、文書管理システムや情報公開、役所内の端末やら関係者の情報技術教育まで、話題は非常に多岐に渡る。後に述べる情報システム調達とも密接な関係がある。

■地域産業活性化とインターネット
多くの人にとって、地域情報化は地域産業活性化のためにこそあるものだ。地域産業はその地域によって全く性格が違うので、インターネットの活用方法も全く異なる。例えば、中小製造業が多いところでは、共同受発注や図面の受け渡しにインターネットを活用するなんて話がある一方、観光主体のところでは、どのように宣伝するか、宿の予約をオンライン化するためには、なんて話をしたりする。インターネットを地域産業活性化の切り札であるかのように話す人もいるが、実際には下駄を履かせるという程度のモノで、劇的に変わったりはしないことの方が多い。むしろ、インターネットを使った企画を考えるために地域産業の人材が集まって一緒に悩むことの方が効果があるのではないかとさえ思う。

■ベンチャーインキュベーション
地域産業活性化とも関係があるが、新規産業を創出しようという試みも多くある。都道府県が中心か。しかし、ベンチャーインキュベーションは難しい。そもそも当たりが出る確率が低いし、サポートの仕方もよくわかっていないケースが多い。グローバルニッチを狙って世界で勝負する強いベンチャーがもし育ったとしても、多くの場合東京に進出してしまって地元には残らない場合が多い。大当たりは望めなくても、地域密着型ベンチャー企業を育成することが吉か?

■医療とインターネット
地域単位で医療・看護にインターネットを生かす例も出てきている。地域内の医者や看護に関わる人がネットワークを使って連携をするようなケースだ。大きな可能性を感じるが、残念ながら詳しいことを知っているとは言えない。いろんなタイプの人が密に連絡を取らなくてはならないこともあり、まず人がどのくらいのコストをかけてシステムを使いこなせるかというところが大きなハードルとなるようだ。これ以外にも、おそらく多くの可能性があるだろう。

■教育とインターネット
教育とインターネットの関係も非常に重要だ。そもそも、アメリカで情報ハイウェイ構想なんて話が出てきたときにも教育は最優先課題だったし、日本でもとにかく「教育にインターネットを導入することが重要」とよく言われてきた。教育は多くの場合地域と密着しているし、公立の学校は自治体に属していることもあって、地域と教育とインターネットの関わりは深い。

■情報システム調達
電子自治体の構築には、必ず情報システムの調達が伴うが、これには多くの悩みがある。ITゼネコンにシステムを丸投げしていてもあまりいいことがないためだ。自治体が発意して欲しいシステムの像を造り出し、それを調達で実現するには、調達の仕組みを工夫する必要がある。

■市民活動とインターネット(エンパワーメント)
市民活動にインターネットを利用することも多い。市民活動をする多くの人は、普段生活している社会では必ずしも多数派ではないが、インターネットを通じて同じ考えを持つ人との交流をすることが出来る。このため、活動をする人にとってはインターネットはかなり有効なツールとなり得るようだ。NPOの活動などでインターネットを利用している例も見られる。が、僕はあまり詳しくない。

■住民の情報発信
住民が持っている情報をインターネットを使って発信していくことで、上滑りではない地域情報の蓄積を作っていこうという動きがある。こうやって作られた情報には、「作られた情報」に見られるような軽薄感はないし、地域の姿がよく表されている場合が多いように思う。関わっている住民自身が地域を見直すきっかけになることも多いようだ。

■インターネット商店街
商店街をインターネットに乗せるというような試みも、非常に多く為されている。しかし、「インターネットで商店街をするのは鬼門だ」という人がいるくらい、この分野は難しい。東京のような特殊な地域を除くと、多くの地域で商店街が寂れているが、これは構造的な要因によるものが大きく、小手先の情報発信くらいで解決できるようなものではない場合が多いのだ。ただ、ある程度の効果を出しているところがあるのも確かで、一概に無駄とか有効とかいうことはできない。難しい。

■GIS
多くの自治体はGISのシステムを運用しているが、地図というのはいろんなアプリケーションの媒介として非常に優秀に働くので、これを中核にしていろんなサービスをできるようにしよう、連携させようなんて話がでている、らしい。残念ながら詳しくない。

■デジタルデバイド
デジタルデバイドという言葉も最近あまり聞かなくなったが、まだまだ大きな問題だ。最初に述べたインフラの問題も大きいし、高齢者などの問題もある。これに対する地域ぐるみでの対応もある。と言っても、最近は地域通信インフラ構築以外の話題については、特に大きく言及されることはなくなってきた。

■情報教育
学校で行われる情報教育だけでなく、すべての利用者向けの情報教育を地域ベースで行う例が増えている。2001年度に総務省の交付金をベースに実施されたIT講習会がこの代表例。民間の事業者も多くある(たとえば「アビバ」なんていうのはそのひとつ)。これだけパソコンの普及やインターネットの利用形態の変化が激しいことを考えると、学校教育で教えるだけでは不十分なことは明らかだ。なぜなら、学校を卒業してから変わることが多すぎるからだ。多くの人は自学自習するわけだが、講習などを通じて学ぶ必要を感じている人も多い。高齢者向けの講習会なども多い。自治体主導のものもあれば、NPOが実施する例もある。

■「地域情報化とは」
さて、ここまで多くの項目を並べてきたが、これらの間には地域という共通点がありながら、視点がそれぞれかなりずれている。ひとつひとつの項目は生活や経済など個別のテーマに密着した話題だけに、引いた観点から「地域情報化とは何か」という見方からそれぞれを位置づけようとするととても苦労することになる。おおざっぱに言えば、「地域をどうにかするために、情報化をツールとして使う」という見方と、「情報化を進めるためには、地域という単位ですすめるとうまくいく」という見方の二つの見方があるように思える。この二つの共通点をあえて言うならば、問題解決指向の考え方だろうか。

もう一つ大きな見方があるとすれば、情報社会のありかた、方向性の中で地域の持つ意味という考え方があるのだろうが、こういう見方は実は一般的ではない。ただし、ぼくが興味を持つのは実はこの見方だ。

うーん。とりあえず項目リストを作ってみたので、今後はこれを増やしたり減らしたり、あるいは見方を整理したりといった道具に使えるかも知れません。

コメント(1)| Track back(0) | 2004-06-08 23:28:08

■ Unknown
この記事とは関係ないんですが5月31日のWinnyの記事にコメント書いたので読んでください。
からし男 (2004-06-09 19:39:50)


名前 :
タイトル :
URL :
コメント :
<< 情報関連政策が難しいわけ(2) 電車男について >>

最近の記事

Powerd by News Handler

本サイトは、いしばし(国際大学GLOCOM)がやってます。