[くまをとる]

インターネットと政治

政治にインターネットに与える影響について簡単に。この話は深すぎて、そんなに簡単にまとめることはできないのはもちろんだが、ここでは若手研究会なんかでされてきた議論や、スマートモブズの文脈で交わされた議論なんかを参考に、今ぼくが考えている政治とインターネットの関係について、キーワードを羅列してみたいと思う。ひとつひとつが深めていくべきテーマなので、そのうち個別のテーマについてここで考えてみることにするかもしれない。

このリストが完全なものとは、思えない。コメントも的確なものかどうかは不明。このテーマについてはもちろん僕より詳しい人がたくさんいるはずなので、ほとんどの点については特に新しいことは言っていないはずで、文献リストもぜんぜんフォローしてません。

★新しい動き
情報技術を使った活動が政治に影響を与えるケースが増えている。フィリピンのエストラーダ政権や韓国の選挙戦などがその直接的な影響の例だし、今回の人質事件では2ちゃんねるでの議論がテレビなどのメディアの言論を左右した節あり。いろいろな形で情報化が政治のやりかたに影響を与えていくことは確実だと思われる。しかし、明確に挙がってくるようなのはどれもまだ特別な例であり、何が定着していくのかはよくわからない。

★直接民主制
数年前一時期盛り上がったが、最近は沈静化してきたか? インターネットを利用すれば、直接民主制が可能になるのではないかという言説があった。表面的には、こういうことが騒がれたのはそれだけ今の日本の代議制が信用されていないということかとも思える。直接民主制が何を意味するかにもよるが、投票によって直接国民が個別の問題について意思表示をできるシステムという意味であれば、投票側のコストが高すぎて現実的とも思えないし、議論の深化に必ずしも寄与しないので、質を高める方向でもプラスかどうかよくわからない。思考実験として何が起こるのかいろいろと夢想してみるのは楽しいかもしれない。誰か興味ある人、やってみますか?

★情報公開
情報公開は政治のあり方が妥当かどうか、誰でも好きなときに検証し議論できる環境の基礎となるため、民主的な政治にとってはおそらく一番重要なことではないか。

政治の情報公開は急速に進んでいる。例えば、「今年の予算案はどうなってるのかなあ。防衛費っていくらくらいかかってるんだろう」とふと疑問に思ったとして、普段からそういうテーマを追いかけていない人がその情報を探して知ること自体が、一昔前は難しかった。それにはまず白書を探して参照する必要があった。そういう情報を数クリックで得られること自体がとても重要な変化だ。さまざまな審議会の議事録など、今までの政府や自治体であれば、原則一般公開などはまったく考えていなかった情報も公開されている。これもとても重要だ。

もちろん政府が扱っている情報の多くは、公開を前提に作成されていない情報(つまり、内部資料として業務に使うのに作成されている、必ずしも秘密情報ではない)で、そういう情報を参照するには情報公開請求が必要となる。この件については、データベース化などが進んでいて、一部の自治体ではネット上で検索と請求ができるようなケースもあるが、どうもあんまりデータベースの質がよくなかったりするケースが多いようだ。すべての文書が決済プロセスで電子化されて、決済と同時に自動的にデータベースに突っ込まれる仕組みになればいいと思うのだが、そこまでの劇的な変化を組織に強いるのはなかなか大変そうだ。

と思っていると、韓国ではどうやらそれをやっているらしいのだ。現物を見ていないので本当にどこまでできるのかよくわからないところもあるのだが、なかなかおそろしい。

★日本の選挙とインターネット
どうもあまりうまくいっていないぽい。日本人の国民性か?
とりあえず、インターネットを積極的に利用する層と、あまり投票しない層は重なっているらしい。

★移動性や耐故障性
エストラーダ政権の件では、モバイル端末(携帯電話)のショートメッセージを使ってデモを組織したりしているために、デモの規制ができなかったりしたと言われている。

古い例になるが、天安門事件で最後まで現場の人から情報が流れてきたのは電子メールだったなんて話もある。どちらも伝聞で恐縮だが。

つまり、インターネットは組織的な弾圧や秘匿から逃れるためのツールとして、有効に働く可能性がある。

★表メディアと裏メディア
テレビや新聞などの伝統的なメディアが日本の言論の表の顔を形成しているが、ここではインターネット上で行われている議論を積極的に出所を明示して参照するようなことはされていない。どうも、周りの人の話を総合すると、そういうことはタブー視されているようだ。もちろん業界としての利益対立もあるだろうし、評価が定まっていない情報源に対する警戒感もあるのかもしれない。

だからといって表メディアが裏メディア(とあえて呼ぼう)であるインターネット上のいろんな情報源の影響を受けていないかといえば、決してそうではなかろう。今回のイラク人質事件で、ネット上での言説がメディア上での人質の責任を問う声に反映されたという見方は多い。ただし、こういうことが日本でこれだけ派手に起こったことははじめてのような気もするが。

この二つが今後関連しあうようになれば、一気に大きな影響を与えるようになるかもしれない。このリンクについては、いろいろ可能性も考えられるけど。

★話題の移り変わりの速度
これはインターネットに限らないことだが、(昔のことは調べていないので)最近は話題の移り変わりが非常に速い。メディアは森ビルの事故で盛り上がったと思ったら、人質事件がおこればそれ一色になってしまう。それが終わると菅さん保険料未納事件。同時に扱われる問題の数が極めて少ない。

インターネット上でもウェブログが普及するにすれて、そういう現象が強化される方向に働いているのではないか、と考えている。お互いに参照しあうことを意識しているため、「同じネタで盛り上がる」ことを指向しているように思えるのだ。これは単なる印象なので、有意な差があるのかどうかはよくわからない。

とにかく、このことが政治に関する議論を深めることを難しくしているという見方がある。これは、本当かどうかよくわからない。ネタで盛り上がるときは、とりあえず同じことをみんなが口にするという現象が起こっていることは確かだが、個別にはみんなやることはやっているわけだ。一番表層でネタになっていないからといって、個別の話が進んでいないと断定することはできない。

★デマゴーグの可能性
えーと。いろいろな可能性がありますよね。

★欠点増幅装置としてのインターネット
上の二つの項目があいまって、何か事件があるとそれを「祭り」にしてしまう傾向がネット上の言論には見受けられる。これは何も2チャンネルに限った話でもない。お互いの意見を参照しあえて、「自分の考えだけが特別ではない」「同じ意見(あるいは突っ込み)をもっている人たちとつながれる」ということが、この効果を生んでいるのではないか。

しかし、この一時的な盛り上がりをみんなが楽しんでいるという仕組みは、主に欠点や事件を増幅し、あら捜しを助長する方向に働く。いいことを評価することは、そんなに盛り上がらない。このため、生産的な議論は盛り上がりにかけ、欠点への突っ込みは盛り上がるという、あまりよくない全体像がかける。困った。

★グループの集中と分散化
インターネットでは、普通の社会よりも自分の考えに近い人を見つけやすい。このため、より近い考えを持つ人たちが小さなグループを作ることになるようだ。

ある問題を取り扱う政治活動で、大きな流れとしては意見が一致している人が集めるのにインターネットは利用できるが、それは時間とともに分解して、より小さなより近い意見を持つたくさんの小グループになる、傾向がある。(thanks to ako)

ううむ。なんだかいろいろ考えることがありますね。
それにしても、今日は短くまとめようと思っていたのに。。。

コメント(1)| Track back(0) | 2004-05-06 23:12:40

■ Unknown
>イラク人質事件で、ネット上での言説がメディア上での人質の責任を問う声に反映された
本当だろうか? それならもっと今回の作者逮捕や解説サイトの家宅捜索について取り上げられても良いし, さらにおおむねネット上では不当逮捕ではないかと言う論調ですがそれも反映されていません
たぶん前回のは丁度都合の良い意見だったので引用しただけでしょう. 意見が反映されるようにもっと頑張る必要があると思います.
Unknown (2004-05-14 19:53:28)


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