最近、特にwinnyの関係でたくさんのトラックバックやコメントを頂いています。有り難いと思う一方、基本的に小心者なのでとても心細い気持ちでいます。
その中に、「なぜP2Pに匿名性が必要なのか?/合理的に説明してください」というコメントがありました。ぼくがこれまで書いてきたwinnyに関する文章の中には、winnyのコミュニケーションの匿名性に触れたものはありませんでしたが、winnyがこれだけ普及した背景に匿名性があるのは明らかで、winnyの肯定的な側面を認める=匿名によるファイル共有の支持=著作権侵害の肯定と取られても仕方のないところもあります。
★考えのまとめ:
さて、以下では極力青臭く、タテマエ論をやってみますよ。個人的意見です。
・今の状況で、著作権侵害はしていいか
NO。ただし、直感的には今の著作権のやり方はいろんな面で間違っていると個人的には思う。
・winnyを作ることは許されるべきか
YES、ただし大変行儀の悪いソフトウェアだと思います。
・winnyを配布・再配布する行為は許されるべきか
YES、ただしそれをただ配って、使い方によっては非合法になりかねないという利用者のリスクを説明しないのは無責任な行為だと思います。
・P2Pに匿名性は必要か
「P2Pに」と言われればNO。設計の目的によります。
・京都府警はやりすぎか
回答不能。好きか嫌いかと問われれば、これまでの報道を読む限り嫌いです。なぜなら、「winnyのような悪を社会から排除する」ために、必要以上の手段を取っている印象を受けるからです。でも、物事は細かいことまできちんと追わない限り、何が正しいのかわからないものです。報道されている情報がすべてとも思えない。多くの有識者のコメントも、限られた情報からされている。
・winnyは擁護されるべきか
文脈による。社会的な責任という面からは、おそらく著作権侵害の文脈では多くの場合NO。トラフィックが多すぎて困るというような文脈やウィルスが……というような文脈では、多くの場合筋違い。ただし、トラフィックの問題については、また思うこともある。多分後日書きます。
たぶん、もっとメタな、情報社会で情報がどう扱われるべきかという議論とwinnyが作った世界との整合性みたいな話から擁護することも可能とは思います。慎重にやらないと危険そうですが。
・金子氏は救われるべきか
微妙。個人的な気持ちとしては、裁判では勝って欲しい。なぜなら、僕の知る限り彼は直接「winnyを使って著作権侵害してよい」と言ったことはなく、winnyで著作物を放流することが違法だということは著作権侵害した人にもわかっていたはずであり、直接的には著作権侵害した人の責任であるべきだと思うから。あれで幇助が成立するとは思いたくない。ただ、彼の行為が非合法な行為に鈍感な人を多く作り出したのは確実で、その点については社会的責任がある。
ただし、法律の専門家ではないので「許されるべきか」というのは印象論に過ぎなくて、「許される」=「合法」であると保証しているわけではないので悪しからず。責任逃れをしたいのではなく、マジメな話よくわからないのです。
★P2Pと匿名性
「P2P」という技術が実際には何を指すのか、つきつめて考えていくとよくわからないということもあるんですが、まあそれはそれとして、その仕組みに匿名性を導入すべきかどうかは設計目標によります。多くの場合、匿名性は必要ないでしょう。そもそも、匿名性の提供はとてもコストが高いので、できればそんなことを組み込みたくはないという場合がほとんどでしょう。
たとえばコンテンツの合法的な流通を目指すソフトウェアであれば、むしろ匿名性を排除して作った方がほとんどの場面で適切だと思います。問題があるケースですぐに思いつくのは、表現するのに匿名性を要するような創作物を発表したい場合にだけ、ですかね。
winnyの匿名性が技術的にどの程度のものだったかはともかくとして、winnyに匿名性を強める機能を導入したのは、どうやら非合法なコンテンツを流しやすい雰囲気を作るためだということは間違いなさそうです。少なくともその設計意図が順法精神に欠けていたとは言えるでしょう。
winnyが参考にしたfreenetのプロジェクトでは、「言論の自由を技術的に保証する」ことが主要な目的であると断言しています。この目的には、匿名性は必要でしょう。そしてこの設計意図が順法精神に欠けているとも思えません。
★winnyを擁護するようなことを言うのはなぜか。
昔書いた日記や、それを転載してもらったITmediaの記事では、「winnyを肯定的に議論する」としています。解説するのもヤボですが、なぜそんな文章を書いたかと言えば、やっぱり「そんな悪のソフトウェアのことは議論もするな。なかったことにしろ」とは言いにくい味があると思うからです。
winnyは開発意図において順法精神に欠けるソフトウェアだし、順法精神に欠けるユーザーを多く生み出したことも確かです。それは確信犯的な行為なので、法を守る立場からすれば咎められるべき行為でしょう。自分でも咎められるとわかっていてやっていたことでしょう。でも、そのことと、「なぜそんなことをしたのか」「そこでは何が起こっていたのか」ということを理解することや、それを肴にいろいろ議論してみることは別問題です。
逮捕することが適切だったかとか、winnyの開発や配布が合法かとかいう議論ももちろんとても大切なんですけど、それはすでに多くの人が展開してくれています。winnyには他にもいろいろ面白い議論のネタが転がっていると思うんですよね。(そして、その一番面白そうな部分を僕はまだ十分やっていません。とりあえず前置きをやっただけ。多分、これから追々。)
★順法精神について
えーと、順法精神という言葉がとてもたくさん出てくるんですが、これは僕の迷いの表れでもあります。「法に従うこと」はもちろんほとんどの場合よいことだと思いますが、それは果たして至高の価値かという疑問が去らないのです。
例えば、今のような個人の所有権の考え方は欧米に発するもので、日本古来の考え方に必ずしも素直にはまるとは限りません。ぼくらが「正しい」と感じることと法律が矛盾することもあります。
また、「順法精神」の観点から言えば、すでに流通している映画のファイルをダウンロードすることはぜんぜんOKということになります。
こういうことを考えると「法を守る」という観点以外の視点を設定して議論した方が適切な場面の多いのではないかと思えてしまうのです。が、それが何かということはまだぼくはわかっていません。というわけで、「法を守る」という観点からいうとどうなるかということだけ書いてみた、という形です。
いや。ムズカシイ。
とても、もやもやしたものをたくさん抱えていますが、とりあえず。今日はこんなかんじで。
コメント(3)| Track back(0) | 2004-05-17 23:28:39
| ■ あと、これも。 | |
| 47氏が踏み込んで語った開発動機。 http://www5b.biglobe.ne.jp/~nnaro/cache/200210/04/479-483.html 著作権に対して何らかの影響を出す事 はある程度想定していたでしょうね。 ようするに、 「freenetみたいなソフトウェアが出てきたら、 完全匿名なんだから、簡単に著作権侵害出来る 現行のシステムなんて崩壊するんじゃないの?って事を啓蒙していた という事でしょうか。 そうなる前に新たなビジネスモデルを考える方向になって欲しいな、と。 最後の方で、「著作権侵害は違法」 と言ってますので、 「ユーザが犯罪行為を行わないように警告しておいて、 各業界がこのP2Pシステムを脅威に感じてくれるか」 という考えなんでしょうかね。 刺し違える気だったとか‥。 | |
| Unknown (2004-05-18 22:03:52) |
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